2000年度・JR城東貨物線,赤川鉄橋における観測演習結果


本研究室の3回生の演習として,今年も大阪市内の河川上における気象観測・熱収支
解析を行いました。

観測日時:2000年8月28日,1507~1657
観測項目(測器):乾球温度・湿球温度(アスマン通風乾湿計:吉野計器製)
:風速(熱線風速計:カノマックス製)
:表面温度(放射温度計:ミノルタ製)

上4要素を東淀川・旭区間を流れる新淀川を渡るJR城東貨物線赤川鉄橋上の橋
脚上の17ポイントで観測してもらいました。これらの観測値を用いてバルク法を
使って顕熱・潜熱フラックスの横断クロスセクションを描くことを最終目的とし
ました。バルク輸送式中のバルク係数としては大気の安定度による補正後の値を
用いました。

以下,学生たち自身の手による結果の取りまとめです。



全体的に,表面温度には時間的変化が見られた。
その変化は,それぞれの地点での土地被覆によって生じる。
水域では,右岸から左岸(地点番号17から1:図の右から左)への風が吹いていた
ため,次第に気温が低下したものと考えられる。
観測地点の土地被覆が,草地や裸地になると気温の変化は小さくなり,ほぼ一定
の値をとっている。
地点8,6,1の土地被覆における表面温度が草地に比べて高いのは,草地では植
物からの水蒸気の蒸発散により,潜熱輸送量が増加して,表面温度が低下するか
らである。また,これは表面温度には影響するが,気温にはほとんど影響しない
ことがわかる。



風速には時間的変化が見られなかった。風向きは右岸から左岸(地点番号17か
ら1:図の右から左)に吹いていた。
観測地点10,11,12において,風は地表の影響を受けなかったため大きな風速
が観測された。河川敷では,地表の凹凸の影響をうけたため,小さい風速が観測
された。



比湿のクロスセクションは乾球温度のものと比較すると,それに依存していない
ことが分かる。
つまり,比湿は気温の影響を受けないということである。
比湿は,1kgの湿潤空気の水蒸気量を表わしたものである。
だから,水面上では鉄橋を渡るうちに空気にどんどん水蒸気が含まれていくため
その値は大きくなっていくが,河川敷ではあまり差が見られない。



顕熱フラックスに関して,水域では値は小さくなる。これは表面温度と大気温度
の差が小さくなるためである。裸地,草地では差が出てくるので値は大きくなる。
この他,風速も関係していて,風が強くなればフラックスも大きくなる。
潜熱フラックスに関して,裸地では値は小さくなる。これは蒸発散量が少ないた
めである。蒸発散効率が小さい値であるのでこのクロスセクションが得られる。
NDVIを考慮すると結果に影響を及ぼすものと推定される。潜熱フラックスの
値も風速の影響を大きく受ける。風が強ければフラックスも大きくなる。最終地
点の水域ではすぐ横を道路が走っているので少なからず影響を受けている。


観測ならびに報告者:美濃佳誉子 矢野貴子 山室幸介 山本良輔
指導・監督者:青野靖之


前のページに戻る