モデル

観測される様々な現象の原因解明、観測された事象の時間、空間的に拡張するためなどに様々なモデルを用います。ここでは当グループよく利用するモデルの紹介をします。生態系における様々なプロセスを数値的に記述するモデルは、現状の陸域生態系に関する知識を整理・理解するうえで欠かせないツールです。

 

群落多層モデル
MultiLayer植物群落を鉛直方向にいくつかの層に区切って、各層におけるプロセスや各層間の輸送を記述することで、森林群落内の微気象やフラックスを数値的に表現することが出来ます。個葉での光合成、気孔開閉、熱収支、エネルギー収支のプロセスや群落内の放射伝達や乱流輸送(例えば、2nd Order Closure model、ラグランジュモデルなど)のプロセスを正確に記述することで、仮想的な森林やその中の微気象を再現することが出来ます。このようなモデルを使用することで、観測で得られた結果を再現するために必要なプロセスの解明や、森林内のエネルギー・物質収支を評価することが出来ます。

 

研究成果 : 1, 2, 3, 40

 

Big-Leaf / Sun-Shade モデル
BigLeafModel群落多層モデルが群落を複数の鉛直の層として記述するのに対し、Big-Leaf モデルでは植物群落を大きな1枚の仮想的な葉として記述することで、植物群落のエネルギー・物質収支を評価します。多層モデルに比べて構造が単純なので最適化などが容易であり、観測事象を説明できるモデルパラメータを逆推定しやすいように感じています。最近では、簡単なBig-Leaf モデル(iBLM-EC)を開発して、直接観測することができない植物生理プロセスを逆推定する研究を進めています。

 

研究成果 : 27, 49, 61

 

 

陸域生態系プロセスモデル

Model陸域生態系プロセスモデルは、陸域生態系の物質循環にかかわる全てのプロセスを詳細に記述したモデルである。例えば、炭素循環(光合成、呼吸、分解、植物季節、分配など)、水循環(蒸散、蒸発など)、窒素循環(脱窒、硝化など)、エネルギー・放射収支を結合させて計算し、生態系における物質循環の過去、現在、将来を予測することが出来ます。

本研究グループでは、モンタナ大学が開発したBIOME-BGCモデルをよく利用しています。 現在はBIOME-BGC モデルの推定精度向上のため、観測したCO2フラックスを用いてモデルのパラメタリゼーション、改良を行なっています。 モデルは必ずしも完全とは言えないのですが、観測された結果の考察や新たな仮説を導くために無くてはならない道具となっています。

 

研究成果 : 8, 12, 13, 17, 23, 31, 38, 42

 

 

 

機械学習モデル

SVR観測されたデータは観測点を代表する情報ですので、観測された情報を大陸スケールや全球スケールなどのより広い地域に拡張するためには観測データを広域化する必要があります。観測データと広域データ(広域気候データ、衛星データなど)との関係が明らかになれば、その関係と広域データを使って大陸・全球スケールのCO2収支などを評価することができます。この際、観測データと環境変数との関連を決めるのに機械学習型の経験モデルが有効なことが分かってきました。本グループでは、機械学習型経験モデルの一つであるSupport Vector Regression法を使って、観測データを広域化し広域のCO2収支、エネルギーフラックス、蒸発散量の推定を行いました。

 

研究成果 : 30, 34, 39

紹介記事 : 海外の森林と林業